【対談】PMDデザイナー マリエ x RETOY'S編集長 エナ 2人が語る"ファッション談義"を初公開

M:いい例でいうと、去年一緒に仙台にツアーに行ったじゃない?その時お店でNEHERA(ネヘラ)のトレンチコート着せてもらったじゃん。

E:うん、着たね。

M:もちろん、「綺麗だな」って感じはあったけど一見普通のトレンチコートに見えて、「何が他と違うの?」って思ってたの。でもエナさんが「袖通してみたら?」って言ってくれて、着てみたらその瞬間「うわー!きたー!」みたいな感覚(笑)「わたし今、ファッションに抱かれてる!」って言うくらい気持ちよかった。あの体験が着てみなきゃわかんないってことなんじゃないかなって思う。

E:素敵だね。

M:人から勧められたり教えてもらったりって、ちょっと面倒くさい時もあるけど、やってみたらまた新しい自分も発見できるし楽しみも増えると思うんだよ。私は、今の世の中の空気って、ファッションはファッション、音楽は音楽、スポーツはスポーツっていう風にきっちりカテゴライズされすぎてしまってることが問題だと思ってるの。例えば、面白いなと思うのは、忌野清志郎さんはそれを体現してて、音楽、スポーツ、ファッションを自分のアイデンティティとして全部やってる。しかも全部本気なのよ、だからカッコいい。

E:どの分野から彼を切り取っても全部、忌野清志郎さんなんだよね

M:そう、だからおしゃれでセンスがあるなって感じる。クレイジーなアイシャドウ塗ってすごい内容の曲を歌ってても、芯があって。それがアイデンティティだしセンスだと思うのね。何が言いたかったっていうと(笑)、さっきの話に戻っちゃうけど、エナさんが言ってくれた、例えばパンクファッション好きなのにパンクミュージックは聞いたことない、みたいな状態って、生きてて辛くない?って思うの。

E:入り口はどっちからでもいいよね。音楽からでもファッションからでも。パンクファッションっていうのが気になって取り入れてみました。そこから、パンクの音楽聞いたっていいと思う。単純にこの人がカッコいい、この人のスタイルが可愛いって自分が思ったらその人の色んな側面が気になって、その人の好きなブランド見に行って、私はこれ好きだな、これは合わないなってアナログに動くことで新しい何かが生まれていく。でも、Webだけではそこまではやっぱり難しい。私はこの世代だから、カメラもアナログから入ってようやく機材を買い揃えたくらいにデジタルの波が来たのね(笑)。周りには、お金もかかるし仕事も新しく開拓しなくちゃいけないし、可哀想な世代だなって言われた。でもそれも捉え方ひとつで全く違う側面があって。私はファッションが好きだから、ファッションを入口としてこの世界に入ってデジタルを人より少し先に見ることができてよかったなって思ってるの。

M:いいこと言ってくれるね~。

E:普通の女の子よりちょっとだけ機械に強くなってちょっとだけデジタルを早く知ったから、すんなりと何の抵抗もなくWebっていうものに入ってこられた気がする。

M:なるほどね~。

E:日本人って消耗しやすいし、されやすいなって思うんだけど、新しいものが出るとみんなわーって集まって、飽きたらポイ。それってファッションにも繋がってると思うんだよね。自分の体で、自分の感覚で体験をしないから飽きるんだと思う。私は新しいものが好きだから、何か出たらすぐ触るようにしてる。でも説明書読まないから(笑)、使えてるの一部かもしれないけど、基本は触って覚える、なんだよね。

M:でもそれは新しいもの好きというか正しい動きだよね。落合陽一さんも、説明書が読めない赤ちゃんでも使えるように作ってあるっていうことが、新しいものに必要なんだっていう風に言ってたな。

E:新しいものはこれからもどんどん出てきて、また無くなって、また新しいものが出てって、それを繰り返すけど、結局それを使うのもそれを産み出すのも人だからね。その人と人とのコミュニケーションが最低限ないと、何のためにそれ作ったの?なんのために便利なの?ってなっちゃう。今(サイズを測ってくれる)ボディスーツとかも出てるけど…

M:エナさんはあれについてどう思うの?それも知りたいな。

E:サイズって一つの指標ではあると思う。でもブランドによってサイズ感って違ってくるし、自分の着たいシルエットもあるよね。ジャストサイズじゃなくてトップスをゆるく着たい、みたいな。どんどん便利にしすぎることで感覚を鈍らせてるって側面もあるかも。私みたいにうるさくて(笑)意見を言う人が一部になってきちゃうと、そうじゃない人がどんどん受け身になって、コピーロボットを量産してしまう感じ。赤ちゃんがカラフルな色を見て目がキラキラ~ってなる、あの感覚を削いでる気がして…。私くらいの世代の人だと一周回って「何着ていいかわかんない…」みたいな人もいるし。

M:あー、そういうのも流行ってるよね(笑)

E:体型も顔も似合う色も変わってくるけど、なんでも楽しめばいい。年を取ると派手な色が着たくなるのもわかる。服からパワーをもらってる感じ。

M:パワー的なもの、あるよね。今やってる染めの技術もそうなんだけど、分子の世界なんだって。生姜で染めたシャツを着て寝ると温まったり、効果があるらしくて。

E:それ絶対あると思う。人間って気持ちが感覚になって影響しあってるから。ハーブやアロマが流行って、パワーや癒しっていう部分にみんなすごく反応するけど、ファッションにはその気持ちがあんまり行ってないなーって感じる。「服は着なくても死にはしない」って私よく言うんだけど、それでも「私にとっては必要なもの」。武装する時とか(笑)

M:私もある!例えばこのジャケットね、最近自分で会社やってるからビビっちゃって買い物を少しやめてたの(笑)でもこのジャケット買った理由が、「次の日の打ち合わせに着ていきたかったから」なんだよね。勝負下着じゃないけど、勝負服。この服を着てバシッと決めたら大人たちの前でもちゃんとできる気がするっていう鎧。このアイテムを着るから強くなれるって思うの。

E:自分にとって必要なものってわかるんだよ。欲しくてしょうがなくて着てみたら「あら、ぴったり!」みたいな(笑)

M:わかる~!思ってた以上に似合っちゃったりしてね(笑)

E:好きで積み上げて繰り返してきたものがあるから、今の自分に似合うものが見つけられる。去年のシーズンですごく気に入ってても、今年着てみたら「なんか違うな」っていうのもあるし。着て失敗して、着てテンションあがって、っていうアナログなことの繰り返しだね。

M:確かに。

E:デジタルって自分の生活の中に取り入れていくものであって、デジタルに染まる必要はないの。”自分がどう見えてるか”は人から感じるものじゃなくて、本当は”自分がどう見えたいか”だよね。さっきのマリエちゃんみたいに「今日は頑張りたいからこれ着る!」っていうのも、ただ服を買うっていうことだけじゃないと思う。ファッションって難しいことじゃない、どれを着ればテンションが上がるか、ってそんな単純なことだと思う。

M:うん、そうだね。

E:デザイナーが自分の服を”どういう意図で作ったか””どういう風に着てほしいか”っていうのはもちろんあると思うの。でも、それを体現して伝えるのが私たちエディターだったりインフルエンサーだよね。そのツールとしてデジタルがあるだけ。

M:面白い話があるんだけど(笑)、私のインスタのフォロワー数どんどん減っていってるんだよね。これマジで!(笑)

E:(笑)

M:あんまり聞かないでしょ?活動の範囲は広がってるのにフォロワーは徐々に減っていってるの。私って癖強いのかも(笑)。私のインスタはある意味すごく精査されてきていて。

E:みんなに好かれるっていうのは難しいよ。何百万人フォロワー数がいてっていう立場になったら、逆に何をアップしていいかわからなくなっちゃうかも(笑)私がいいと思うものに興味を持ってくれる人に届けないと、結果、服も売れないと思うしね。

M:確かに確かに(笑)

E:買う人に届かないと意味ないもんね。興味ない人に届いても売れないんだから、どこに向けて発信したいのか?っていうのが大事。

M:私が自分のブランドを起ち上げる時、ちょうど東コレのアンバサダーをしている時期だったのね。勉強も兼ねて色んなブランドを見て価格帯をチェックしてたんだけど、「え!高っ!」って思った。こう言っちゃなんだけど、無名の、駆け出しの日本のブランドの価格はやっぱり高い!!もちろん、私のこのブランドのTシャツも高いと思うよ。でも私がラッキーだったのは「マリエちゃんが作ってるTシャツだ」っていう付加価値だけで見てくれる人もいるのね、ありがたいことに。いい生地使ってるからって知らないお客様も正直多い。マリエちゃんが作ったからって買ってくれるのもすごく嬉しい。実際着てみたらいいものだってわかってもらえるという自信もあるし。

E:それくらいの値段つけないとやっていけないんだと思う。ある人に、「東コレでショーやってるブランドって、東コレの時しか名前を聞かない」って言われたことあるな。日本にももっと面白いブランドはあるんだけど、そういう人達はショーはやらないで海外でバイヤー向けの展示会をやったりしてるもんね。なんでそういう人たちにショーをやらせてあげないんだろう?セレクトする人の見る目に疑問を感じるし、お金の使い方間違ってるな〜って。古い体制が出来上がっちゃってるんだな。

M:うんうん。

E:海外のコレクションに行って、あのど派手なファッションのお祭り感を味わっちゃうと、東コレは疲れてる感じしちゃうな。東コレにはカメラマンとしても、撮りたい、声をかけたい人が少ない。海外だと会場でテンションあがるんだけどそうはなれない自分がいる。服で無理やりテンションあげていくみたいな(笑)みんなショーを見に来るんだからもうちょっとファッション頑張ればいいのにな。

M:「I’ve never seen anyone like them in N.Y.!」て感じ。ニーマン・マーカスの社長もメイシーズのバイヤーのトップとも挨拶したことあるけど、みんなめちゃくちゃオシャレなの。

E:そうだよね~。わかる!あ、そろそろ時間みたい!

M:え、早い!私たち、喋ると止まらないね(笑)

E:じゃあそろそろまとめに入ろうかな(笑)ファッションを楽しむ方法って人それぞれたくさんあるから、これから色んな人を招いて、話して、読んでくれた人がもっとファッションに興味を持ってくれたらいいなって思ってる。デジタルの中からアナログな何かを生んでいきたい。私はマリエちゃん自身がそれを体現できる人だと思ってるんだよね。

M:いえいえそんな、私ももっと学ばないといけないんですが…。

E:最初は誕生日一緒なんだよね、くらいの親近感だったけど(笑)

M:そうだったね(笑)、でもあと3時間できるよ、このトーク。しかも私たち真剣だからね!(笑)私はね、もっとみんなに人生を楽にしてほしい。自分の好きなことに没頭することが自分の人生を豊かにするって信じてるから。ファッションじゃなくても、読書でも音楽でもプログラミングでも、何でもいい。それってすごく自分の心に栄養を与えてくれて、人格やセンスに現れてくると思うの。そういうことに気付いてほしいから、私たちの話の用語がファッション用語でも、これは自分にとってはどういう意味なんだろう?って思って聞いていてほしいな。

E:すっごくわかるな。

M:超楽しいね(笑)久しぶりにこんな真剣な話を二人でできたし。

E:NYC行った時も延々こんな感じだったね、私たち。ファッションが好きだし、楽しいから、その感情をもっと持って色んなものをみんなに体現したいな。

M:素敵です。

E:若いうちはそんな考えすぎないで、変わるから(笑)

M:時代も状況も変わるからね。iPhoneみたいにアップグレートしていけばいいんだよ。

E:変わることが悪いことでは全然ないしね。

M:このコーナー月1でやろう、いいストレス発散にもなるわ(笑)

E:とりあえずまた二人で喋ろっか(笑)次回もお楽しみに~!

PHOTO / Nobuko BaBa
TEXT / Marina Tsutada
SHOP / GOOD LIFE FACTORY

左上から時計回りに:フムス ¥300 / ファイバーリフレッシュ ¥1,280 / パワーチャージ ¥1,820 / アサイーベリー ¥800 / ビューティーチャージ ¥500(S) / グリーンバイタミックス ¥500(S) 全て+tax

 

カスタムサラダとヘルシーボウルのお店。話題のスーパーフードもチョップドサラダも、頑張って挑戦してみたけれど、なかなか続かない。どうして? 毎日の食事で野菜をたくさん摂りたい。でもおいしくないと続けられないし、続けなければ健康になれない。そう、おいしくなければ、ヘルシーじゃない…!そんな思いから、毎日食べたくなる、本当においしいサラダ屋さんを始めたという、グッドライフファクトリー。40年以上に渡る多様なレストラン運営の粋を集めた、ヘルシーなだけじゃない、本当においしい一皿を提供している。/ サラダ ¥980~¥1820 , ドリンク ¥250~¥950

■GOOD LIFE FACTORY
東京都港区南青山7-11-4 H.T南青山ビルディングⅢ1階
TEL 03-6805-0240
OPEN 11:00~22:00(ラストオーダー 21:00) 年中無休
goodlifefactory.jp



CONTENTS