あなたにとって、”いい”デザイナーの意味とは?
2016年はあなたにとってどんな一年でしたか?
出会ったり別れたり捨てたり失ったり拾ったり降ってきたり恵まれたり手を差し伸べたり。小さくても大きくても、悪くても良くても、変化があったはず。
ファッション業界にとっては、「最も厳しい一年」と表現している人が多いようで。それは「真価が問われた年」とも解釈できるはず。
不況のためか業績を落としたブランドも多く、see buy now buyの動き、デザイナー交代劇(これに限ってはここ数年ずっとですが…)を見ても、業界全体が混乱していて予測不可能な事態がたくさん起こっています。世界情勢に目を向けて見ても、同じですよね。
こういうピンチの時こそ人間、本質が現れるもの。
各ブランド本来の“色”が浮き彫りになったし、主要都市それぞれの特徴も顕著だったなというのが私の感想。
ニューヨークにとってファッションはビジネス兼エンターテイメントであり、消費者の求めるものを差し出してあげる、give and takeな関係性。現実的だし便利だし、身近な存在。
ミラノは何があってもミラノ。どんなに外が騒がしかろうが己を貫き通し、逆にどんな静寂の中でもお構いなし。消費者に対しては「連いてきたいなら、どうぞ」的なSっ気たっぷりなんだけど、心は温かい。
そして感情論や道徳的な意味をファッションに求めるのが、パリ。もちろんビジネスも大切だし、己を曲げない軸も大切。だけどファッション自体、目的ではなく“方法”と考える傾向にあるみたい。
ロンドンは次シーズンから取材へ行くので、どんな印象を与えてくれるのかとっても楽しみです。 Christopher Kane、Simone Rocha、Marques Almeida、Rejina Pyoと成長を近くで見たいブランドがたくさん、、、!
物が溢れ選択肢が増えるからこそ、選ぶことに慎重になっていく。そんな人間心理が働く、と分析している記事を多く読み、深く共感…。
何かを購入する時、そのブランドの理念や想いに賛同し、共鳴できるからこそ欲しい、っていう感覚です。いいブランドはたくさんあるし、いい洋服もたくさんあるんだけれど、ただ“いい”だけじゃ物足りなくて。
ファッションって本来そういうものだし、ロゴとかブランド価値ではなくて、もっとパーソナルな部分を他者と共有し、表現できるもの。
何を“いい”とするかは個人の価値観だし、好みもある。必ずしもメゾンブランドが作るアイテムだから“いい”とは限らないし、流行っているから“いい”わけでもなく。
個人的な私にとっての“いい”は、いかに人間味があってパーソナルか。時代とマッチし消費者の想いを汲み取るデザイナーもある意味ではいいんだけど、そこに人間味がないと、しがんだ後のチューイングガムみたい。
ものづくりに取り組む全てのクリエイター、特にファッションデザイナーには心から敬意を払っているし、深い尊敬の念と憧れがあるからこそ、彼等の意図や想いをジャーナリストとしてもっと伝えていきたいなーと、これまで以上に熱が増した一年でした。
「世に送り出す全てのピースがメッセージ」と教えてくれたCelineデザイナーのフィービーの言葉が、2016年を要約できます。
そこには全てがあって、何もないんです。
年明けからパリに移り住み、思考・挑戦・試行・失敗を繰り返しながら、たくさんの初体験を経験しました。思っていた以上に上手くいったこともあれば、悔しいほどどうにもならないこともあって、掴みたいのに触れることすらできないものの方が多かったかも。やっと手に入れた欲しいものは意外と味気なかったり、迷子になった暗闇で宝物を見つけたり。
そう簡単には思い通りに事が運んでくれないからこそ楽しいし、思いがけない“偶然性”をますます高めていきたい。運命任せっていうと無責任に聞こえるけど、努力はしつつも自由気ままに〜。
ファッションは大好きだけど、私の全てではないし、
仕事は必死だけど、肩書きにしか過ぎなくて、
全霊かけて愛していても、結局は他人で、
学歴も国籍も環境も、事実であって個性ではない。そうです、そこには全てがあって、何もないんです。
表面的なことや目に見えるものだけではなくて、もっともっと深い部分に視点を当てて、ディスカバリーしていきたい2017年。
来年もどうぞお付合いください♡
Post by ELIE / 2016.12.22