編集長Enaの"今、あの人に会いたい!" ニューヨークで活躍するパタンナー高屋敷弘基に聞く、パタンナーという仕事、そしてニューヨークの今
ファッションのこと、旅のこと、仕事のこと、編集長Enaが会いたい人とゆるーく対談する「編集長Enaの”今、あの人に会いたい!”」コーナー。今回は、ニューヨークでパタンナーとして活躍する高屋敷弘基さんに、パタンナーという仕事、そしてニューヨークの今、街や暮らしなど、気になる話をたっぷりと聞いてみました。
Ena(E):そもそもなぜニューヨーク(以下:NYC)に行くことになったの?
高屋敷(H):自分のキャリアを伸ばしたいという思いがあり、10年ほど前にNYCに移住しました。
それまでは、専門学校を卒業してからすぐにパタンナーとしてアパレル企業に就職をし、10年以上キャリアを積んできました。
ただ、レディースオンリーで、メンズのパターンをやったことがなかったり、まだまだ自信がない部分もあり、NYCだったら、色んな事にチャレンジできるのかもしれないと思いました。
E:でも、なぜ他のファッション都市ではなく、NYCだったの?
H:移住する前の年に、NYCのメトロポリタン美術館でALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)展をやってたんです。
旅行でたまたま行ってたんですけど、その時、知り合いのツテで今お世話になっている会社の社長を紹介して頂き、それがきっかけで、そこで働かせて頂ける事になり、思い切って移住を決めました。
E:タイミング的にもNYCに呼ばれてたのかもね!
E:パタンナーとして日本でのキャリアより、やっぱり海外っていうのはずっと結構若い頃からあったの?
H:そうですね、やっぱり自分の技術を伸ばすのには、海外での経験も必要なんじゃないかって漠然と考えていましたね。
E:今も日本と行き来してると思うけど、実際に向こうに住んで、NYCの印象は変わった?
やっぱり全然違うな〜とか、逆に困ったな、みたいなこともあったりする?
H:仕事においては、やっぱり違いはすごい大きいなと思った。まずスピード感が全然違う!うん、やっぱり早いですね。
早いのにミスは許されないというか、ハイスピード、ハイクオリティーっていうのを常に求められるので、それに慣れるのがまず大変でした。
最終的に見た目が良ければ良いってところは、もちろんあるんだろうけど、納期が短いのにも関わらず、良いものに仕上げるのは難しい事ですよね。
自分の作業の中でいかに無駄な事を見つけて省いていくかが大事で、今ではそれにもだいぶ慣れてきましたが、でもやっぱり大変ですね。
あと、10年暮らしてても、生活の方はやっぱり物価も高いし大変(笑)
E:物価高いよね!!
H:部屋を見つけるのも大変!競争率が激しいし、審査も厳しかったり、、
でも、意外と日本人っていうので、まずちょっとポイントが上がるんですよ。日本人は家賃滞納したりしないし、部屋をきれいに使うので。
そういう人種だっていう共通の認識があるように感じます。
E:そうだよね〜色んな人種が集まる街だもんね。
もちろん物価は高いだろうけど、マンハッタンはいろんな新しい場所やシーンがどんどん出てくるじゃない?街が変わっていく速度も早いし。
色んなエリアや街を見に行ったり、探索したりっていうのはある?
H:そうですね、探索しに行くこともあるんですけど、僕、NYCに10年ぐらい住んでて、15回ぐらい引越ししてるんです(笑)
あまり引っ越し運?みたいなものがないのか、トラブルにあったりする事が多くて、、例えば管理人が勝手に部屋に入っていたとか、電気系統が古すぎて電気代が異常に高いとか、そんなトラブルにあったりする事が多くて、思い返せば色々なエリアに住んでいたなぁ。
チェルシーからスタートしてワシントンハイツ、ハーレム、ロウアーイースト、イーストヴィレッジ、クイーンズ、ブルックリン。
だから、気付いたらもう大体のエリアには住んでる。なのでわさわざ行かなくてもその街の雰囲気なんかがわかってるから、あまり住んでたところには行かないことが多いかも。
E:NYCは少し歩いてエリアが変わるだけで全然違う街にいるような感じがするよね、いる人種も変わってくる。それが面白いよね!
私がはじめてNYCに行った時、ロウアーイーストサイドのホテルに泊まったんだけど、朝外に出た瞬間、中国の市場かな?って思った(笑)チャイナタウンの方だったんだよね。そこから数ブロック歩いたら、イタリア人街だったり、なんか日本ではあまり体験することのないこう、ぎゅっとしてるんだけど、いろんな人種の人たちの生活がそこにあるっていう、ほんとに異世界だよね、日本人から見るとね。
だから行くとパワーを感じてワクワクする反面、パワーを持っていかれる感じもある(笑)
H:もうほんとにそんな感じ。何か希望を持ってないと、吸い取られるだけみたいなね(笑)
僕、10年間で多分その半分ぐらいはもう結構吸い取られてたんじゃないかな〜。
E:今の話聞いてるだけでもマンハッタン周辺は網羅してる気がするんだけど、
ブルックリンとかもそうだけど、今マンハッタン周辺のエリアに住む人が広がってきてる気がするんだけどどう?
H:確かに、ニュージャージーのグローブストリート辺りに友達が住んでから行くようになったけど、その周辺もすでに人気エリアで、マンハッタンよりももっと新しい作られた街って感じがする、ボストンみたいな。
ニュージャージーに住んだことないからいいかもって思ったりしますが、もう引っ越しも疲れました(汗)
最近は本当に家賃が更に高くなってきていて、ワンルームのスタジオでも2000ドル以下はあまりないですよね。
少し前にワシントンハイツ(マンハッタンのかなり上のほう)にリーズナブルな物件があって見学にいったら、30人ぐらいの行列ができてた(笑)
E:日本でももちろん、街によってあるだろうけど、NYCは特になんだね。
H:今、僕はイーストハーレムの方に住んでるんですけど、ハーレムは昔に比べてウエスト側はおしゃれエリアになって家賃も高くて、中央、イースト側はまだ危険なエリアって言われてるんですけど、新しいアパートがどんどん建ってて、今年はTRADER JOE’S(トレーダージョーズ)やTarget(ターゲット)も出来るし、治安も少しずつ良くなってますよ。
E:今まで色々なエリアに住んでたと思うんだけど、好きなエリアとかってある?
H:僕、ちょっと気になっているエリアがあって、ブルックリンにあるベイリッジっていうエリアなんです。
中東系の人がいっぱい住んでて、降りた瞬間にいわゆるアラビック文字の看板がたくさん目に入ります。中東系のレストランやスーパーマーケットもたくさんあって、ほかでは全然見ない品物ばかり売ってて面白いんですよ。
そこは住んだことなくて、住んでみたいな〜と未だに思ってるとこなんですけど、ただやっぱり会社に行くのはちょっと遠いかな(笑)
E:日本から旅行で行くなら、今またここが面白いよみたいなエリアとかは?
H:そうですねぇ、今住んでいるハーレムとか、結構変わっていきそうだから面白いかも。ミッドタウンからもサブウェイで15分ぐらいだし。
あとマンハッタンから渡ってすぐのロングアイランドシティが賑わってる。
夏におすすめなのはジャージーシティのホーボーケンかな。ハドソンリバーを挟んでマンハッタンを見渡せてすごく景色がきれい。リーズナブルで美味しいレストランもたくさんある。
それと、もし夏に旅行で来るなら、ファイアーアイランドに行ってほしいです。ビーチも綺麗で、細長いから同じ場所で混雑することもないし、マンハッタンから2~3時間で行けるから、日帰りでもじゅうぶん楽しめます。またRETOY’Sでもおすすめスポットなどを投稿していきますね。
E:多分、皆さん細かくはわかっていない人が多いと思うんだけど”パタンナー”という仕事について教えて。
H:簡単に説明すると、デザイナーがデザイン画を書いて、それをパタンナーが立体の形にしていく仕事です。2次元のものを3次元にしていくんです。
それを平面におとして作図化して型紙を作っていきます。それを元に工場が裁断して縫製していくんです。
着心地だったり、その時代のトレンド感だったりとか、担当するパタンナー次第で良し悪しが決まっちゃうっていうことになりますよね。
E:パタンナーさんの作る形がそのまま上がっていくのよね。
そもそもデザインされた絵をパターンに起こす時って、シルエットがこうでっていう絵が頭の中に浮かんだものを型にしていくものなの?
H:そうですね、デザインを頂いた瞬間にシルエットやディテールのイメージが湧いてきますね。
で、その頭の中でイメージしたものを膨らませて、パターンに起こしていくって感じです。もちろん人によってやり方は色々だと思うんですけど。
パターン制作には大きく分けて平面作図と立体裁断という2種類の手法があって、平面作図っていうのはいきなり平面上で作図をしていきます。例えば建築家が家の設計をするみたいに寸法をとりながら作図します。立体裁断はそれをしないで、いきなり生地をトルソーにドレーピングしながらピンで形を出していくやり方です。
その生地をほどいて紙に移して平面化していきます。
E:平面作図と立体裁断、パタンナーの皆さんは両方できるものなの?
H:どちらかしかできない人もいますね。現代はシンプルな量産型の洋服が多いので、平面作図が主流なんだと思います。
逆にモードでデザインものの洋服を作るパタンナーだと立体裁断の方が主流になってきます。
E:ドレスとかになるとそうだよね。
H:そうですね、僕は色んなカテゴリーのデザインをやりたいので、だったら両方できないとダメだなって感じていたから、パタンナーを始めた頃から両方で作成してきました。両方できると、それをミックスして色々試すようになりました。例えば平面作図を、頭の中で立体裁断しながらのイメージで作図したり。
多分その自分で見い出したやり方っていうのが、NYCのハイスピード、ハイクオリティーのものづくりにもマッチしているようにも感じています。
E:そのスタイルがNYCでの仕事にマッチしたんだね。
H:NYCに移住するまではウィメンズしかできなかったけど、今ではメンズもできるようになってすごく仕事の幅が広がりました。
ウェディングドレスだったり、MET GALAのゲストのタキシードをやらせて頂いたり。色々なブランドのパターンを担当させて頂けるようになりました。
会社のオリジナルブランド”OVERCOAT”のパターンも担当していて、ユニセックスなブランドなのですがパターンがとても面白いです。
E:そもそも今だいぶ服自体ユニセックスになってきて、メンズのお洋服もボリュームのあるものだったりを好む人がいたり、メンズの服もレディースの服もスタイルでミックスされるようになってきたよね。そういう意味でもOVERCOATみたいにどんなスタイルや体型の人が着ても、着る人によってその人のフォルムに馴染む洋服がマストになってきた気がする。
私がOVERCOATに出会ったのはNYファッションウィーク中に、お友達のデザイナー青柳龍之亮くんが着てたコートが素敵で、展示会にお邪魔したのがきっかけだったけど、最初にコートを着た時の肩周りとか、同じコートでもメンズが着るのと私が着るのとで違和感ないシルエットになっていることに感動したのを鮮明に覚えてる!
E:パターン自体はメンズ寄りから作っていくの?
H:メンズ寄りから入ってますね。でも一言でユニセックスと言っても、ただメンズのパターンをウィメンズにグレードダウンするのとは違って、ちょうど良いバランスを見つけてパターンに落とし込んでいくのが難しいです。
でもそのバランス感が、今までにないサイズ感やシルエットに繋がっているんだと思います。
E:それこそ秋冬でオーダーした黒のコートなんて、もう何十年ぶりぐらいにオーダーしただろう(笑)黒って硬くなるというかきつく見えるけど、それを全く感じなかったのは、多分あの1枚仕立ての柔らかさだったり、ちょっとローブっぽい流れるような感じだったりなのかな。逆にもうちょっと背の高い男の子とかが着ても、それはそれでエレガントなのかな〜とか想像を掻き立てられる感じだった。
私は自分が背が高いから、あの軽さと丈感は探しても絶対ないし、これは!と思って。
パターン引いていく上でも、今までよりトライが増えてる?
H:例えば、メンズのやり方を取り入れてウィメンズの袖を作図してみたり、逆にウィメンズのやり方でメンズを作図してみたりとか、例えば、メンズのやり方を取り入れてウィメンズの袖を作図してみたり、逆にウィメンズのやり方でメンズを作図してみたりとか、逆にフェニミンな雰囲気が入ったメンズのアウターができたり。ものづくりの可能性は無限だなあって(笑)
E:パタンナーとして、シーズンなのか、気分なのか、見たものなのか、誰かとか、インスパイアされたり、影響を受けたりはする?
H:そうですねぇ… NYCには美術館がたくさんあるので、よく足を運んだりしますが、あまりそういう感じでインスパイアを受ける事はなくて、もっと普段の生活から影響を受けることの方が多いかな。例えば、毎日サブウェイに乗るんだけど、本当に色んな人種がいて、ファッションも様々で、トレンドとか関係なく自由に洋服を着こなししている人が多いんですよね。大胆な着こなしも多くて(笑)あぁそんな着こなしがあったんだって、そんな感じで外を歩いている時はいつもキョロキョロしています(笑)
E:確かにNYCは色んな人種の人が集まってるからこそ、色んなタイプの体系の人だったり、肌の色だったり、もちろん格好もみんな様々で、だからこそインスパイアされるのかも。
そういう意味ではNYCという街はインスパイア源が多いかもしれないね。
E:パタンナーとして大事にしてることとか、こだわりとかはあったりする?
H:とにかくイメージをする事ですね。僕が作るこの洋服はどんな人がどんなシチュエーションでどんな気持ちで着るんだろう、、
頭の中でイメージがしっかりあれば、あとはそれを追いかけていく感じですね。
E:最後に、若いパタンナー志望者のみなさんへ、アドバイスやメッセージをお願いします。
H:機会があれば是非、海外でチャレンジしてみる事をおすすめします!
E:今日はたくさん話せて楽しかった!ありがとう!!
■OVERCOAT