3ヶ月の韓国活動から帰国したばかりモデル「高野友吾」のチャンスを掴み取っていく力と背景にある熱い想い

PHOTO Ena Kitamura

 

・韓国の現場の雰囲気はどうでしたか?

ー僕を求めてくれていたのでやりやすい環境ではありました。
モデルって人を感動させられるのか?って考えていた時期があって。僕を知らない人が雑誌を見て心を動かされることが果たしてあるのだろうか?って。その答えはまだわからないけど、ある撮影でシューティングが終わった瞬間、周りのスタッフが僕のパフォーマンスに対して拍手してくれたことがあったんです。「全て使いたくなる写真が撮れたよ!」って。その時にこうやって人の心を動かし続けることがモデルとしての仕事で一番大事なことなんだなって感じたし、韓国に来てよかったって思ったんです。

 

・それは初めての感覚だった?

ー言葉が通じないからこそ、ボディランゲージなりその場の感覚に対して敏感になるじゃないですか。これじゃ良くないなって思う時もあったし、周りのニュアンスも空気感もわからない時がありました。そういう時って自分の頭で考えて動いてないことが多いんですよ。だから撮影に入った時、韓国語やニュアンスがわからないからパフォーマンスしないっていうのが一番ダメだなって思って、自分なりの表現をしまくってポージングしていたら拍手という形で評価してもらえた。
表現することで人を感動させて、表現する側の自分も喜びを得ることって素晴らしいことだなと。もっといろんなことを勉強したら、さらにいいものができるんじゃないかって思います。

 

・韓国での経験を通して自分の課題も見えてきましたか?

ーそうですね、課題はまだまだたくさんあります。
韓国から帰ってくる直前にPV撮影の仕事があったんですが、スチールは「現場で俺が何とかする!」くらいの自信がついてきていたのにムービーではほとんど何もできなかった。周りの反応もよくないし、モデルになりたての時のやるせない気持ちを思い出しました。すごく悔しかったのでそれもまた新しい課題ですね。表情と目線だけで何かを表現するってこんなに難しいのかと。勉強することってもっともっとあるんだなぁと実感しました。

 

・役者さんはポージングができなくてもそこにいるだけで画になりますもんね。

ーカッコつけるだけがカッコいいんじゃないんですよね。ダサいことができる人はカッコつけることもできるけど、カッコつけるだけの人はそれしかできない。モデルって人間自身を表現する仕事。何かを求められたときにできない自分もカッコ悪いと思いました。

 

・ムービーのお仕事は初めてだったんですか?

ー東京でCMの仕事が一度あったんですけどまた全然違いました。韓国では僕が単独メインだったしそれも初めての経験。顔アップで目線と表情のみ、僕しか伝えるものがないっていう感じ。景色も何もなくて、あなたの表情だけで伝えてくださいっていう一本だったから誤魔化しがきかない現場だった。新しい壁ができたなって衝撃を受けました。

 

GQ Korea

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・仕事に対して真面目に考えすぎちゃうところも?

ーそうですね(笑)仕事の前に眠れないこともあるし、このままじゃダメだなって自分でも思います。スタイリストさんから負けず嫌いが顔に出てるとも言われました(笑)それってよくないじゃないですか。だから最近は毎回仕事入るたびにとにかく落ち着くことを意識しています。

 

・自分で自分を認めてあげなきゃいけないんですね。

ーまさにそんな感じです。自分を認めるってどうやったらできるんだろう?成功したら自分を認められるってずっと思ってたけどそうじゃないなって。自分を認めたうえで、さらにもっと頑張ろうって思えたら一番いいんだろうな。韓国ではそういうことを一日中家で考えてたこともありましたね(笑)

 

・韓国では色々な意味で影響を受けて帰ってこられたんですね。

ー韓国に行く前は人との勝ち負けをずっと気にしてたけど、そんなはことどうでもよくなった。自分自身に勝つか負けるかっていうのはあるかもしれないけど、人に勝つとか負けるとかではないんだなって。だいぶ自分の角を削られた感じです。
前は「あの人はあんないい仕事してて悔しい!」っていう嫉妬心や劣等感が原動力になってたけど、今は「あの人もあそこで頑張ってるから俺もこのステージで頑張ろう」って思えるようになった。毒が抜けたんですかね、毒の塊だったんで(笑)まだまだ抜けきってはないと思うけど。最近、誰に会っても言われますもん、「大人になったね」って(笑)

 

・そこに自分で気づけたっていうのは大きいですね。

ー周りからあの攻撃的な時も面白かったけどねって言われるけど、でも根本的な自分の芯っていうのは変わってない。無駄な部分がなくなっただけ。丸くなって、笑顔の撮影がスムーズにできるようになりました。前は「笑顔おねがいします」って言われても顔がパッキパキで(笑)ファッションの撮影で笑顔を出すなんてダサいと思ってたけどできない方がダサい。求められたものができないのが一番ダサいんだなって。

 

・いろんな引き出しが自分の中で作られてきたんですね。

ーそうなんですよ。自分自身が自分をどういうものかわかっていないのに、なんで自分はこうだ!って決めつけてるんだろうって。

 

・ファッション好きになったきっかけは?韓国で仕事してファッションに対する意識は何か変わりましたか?

ー今、原宿の古着屋で働いている幼馴染がいるんですけど、学生の頃からすごくオシャレで、いろいろ教えてもらいました。友達の影響が大きいですね。韓国では何も変わらなかったですね(笑)相変わらず自分の着たいものを着るっていう感じ。自分がカッコいいと思ったものをずっと着ています。

 

MAISON KITSUNÉ

popeye

 

・そもそも韓国へのトライのきっかけは?

ー事務所が韓国にできて、2、3ヶ月してから仕事で初めて1週間ほど行きました。
その間にマネージャーさんの売り込みのおかげもあって、ラグジュアリー系の有名な媒体3誌に出させていただけて。ファッション関連でこんなにいい仕事できるなんて嬉しかったし、こんなハイクオリティな撮影を経験させてもらえるならヨーロッパに挑戦する前に韓国でしっかり準備してからいきたいなって思ったんです。
ソウルコレクションで1ヶ月行くつもりだったんですけど、韓国のクライアントの方に「12月まで3ヶ月はいたほうが君にとっていいキャリアを残せるよ」って言われて。1月にはミラノに行くことが決まってたし、韓国とミラノ合わせると4ヵ月も日本を離れることになるのでちょっと怖かったんですけど、ここでビビってても仕方ないなと思って行くことを決めました。失敗しても死ぬわけじゃないし(笑)

 

・色々なタイミングが重なったんですね。

ータイミングが来てそこにうまく乗っかれたというか、乗っかるように頑張りました。これはチャンスだと思ったので行ってよかったです。

 

・韓国より先にミラノに行くことが決まってたのですか?

ードルチェ&ガッバーナの来日ショーの時にあちらのGQの編集長に気に入っていただけて。その時はまた会おうねって感じで終わったんですけど、最近になって「ミラノに仕事しにくる予定はないの?」ってメッセージをいただいたので、「行きたいです!!」って返事したら「俺が事務所も決めてやる!」ってあちらの事務所を紹介していただきました。
滞在先もその方にお世話してもらうんです。すごく運がよかったと思います。

 

・ミラノはファッションウイークに?

ーとりあえず今回はあちらで自分がどんな感触なのか、どんな感じなのか見てきたいと思っています。ファッションウイークに向けて行くんですけど、そこから1ヶ月間滞在するのでいろいろ挑戦したいですね。日本でのキャンペーンの仕事も絶対取りたいので、自分で期限を決めて1月31日ぎりぎりまではミラノで頑張ってきます。

 

・ミラノでまだ1ヶ月色んな体験ができそうですね。

ー先輩モデルさんたちのおかげで、今ではヨーロッパでもアジア人がかなり認められてきていると思います。その礎の上に立っている僕らがもっと日本人モデルの立ち位置を築き上げていきたい。もっと認めさせていきたいし、自分自身のレベルアップにも繋げたい。今回はすごくいいチャンスなので、いろんなことに目を向けてメンズモデル業界でもっと新しいことできたらいいなって思いますね。

 

 

・2019年の始まりはミラノから?

ーはい、ミラノの後はパリにも行けたら。パリの知り合いに連絡が取れれば、その方にお世話になろうかと。無理だったら野宿でもなんでもいいので(笑)

 

・2019年は海外のトライから始まってその先は?

ー海外で戦って自分自身のレベルをもっと上げて行きたい。その先に何が見えるかはまだわからないけど、まだまだトライしたい気持ちでいっぱいです。2月1日にミラノから帰国して10日後にはまた韓国。ほぼ日本にいないけど、今の自分に必要なことなので一つ一つがむしゃらにやっていかなきゃいけない年になると思う。2018年の後半から走り出しているので、2019年はもっとスピードあげていかなきゃという感じかな。
前は「仕事がない、お金がない」っていう所で悩んでたけど、今は仕事に対する姿勢や問題で悩めてる。それは一つステップが上がってるということですよね。またもう一つステップを上げていって、物事に対して真剣に一つ一つをクリアできていけたらいいなと思ってます。

 

・将来のビジョンは?

ーモデルやろうと思って東京に出てきた時に決めていたのは「25歳でモデルを辞める」ということ。今はモデル自体を辞めるかどうかはまだわからないけど、もっとグローバルに動きたいなという意識が出てきています。今の時代だからこそできることだし、もっといろんな人と会っていきたい。次の課題としては映像ですね。

 

・仕事をしていくうちにどんどん考えも変わっていきそうですね。

ー今やれることを全部やって成果を残せたら、また考えることも変わってくるんだろうな。今は目先のことしか考えられてないですけどね。でも先のことって考えれば考えるほど不安じゃないですか?今現在のことをしっかり見つめれば見つめるほど僕は希望が湧いてくるタイプ。明日の仕事のことや今の自分に何が必要なのかを考えたり、毎日自分と向き合ってます。
今だからこそ、こうやってミラノに行く前にインタビューで残してもらうことにも意味があるなって。

 

・今回ぜひインタビューをと思ったのも、韓国でのご活躍を見ていて海外での活動を視野に入れて今後、人としてどう変わっていくか、挑戦の過程を聞いてみたかったんです。

ーこれまでインタビューされている方々の記事を見たんですけど、僕でいいのかなって正直思いました(笑)
でも今後、僕がもっと大きい人間になればいいし、今インタビューしていただけるっていうことは何かしらの応援や期待を持ってもらえているからだと思う。発信したい欲はあるからすごく嬉しかったです。

 

・これからのご活躍も楽しみにしています!

ー東京に来なかったら、ここまで人との繋がりが大事なことだと思えなかった。ここまで来れたことにもお世話になった方々へのご恩を感じるし、自分が100%の力で表現していく姿を見せることでしかその恩は返せないと思う。この先は何をしてるかまだわからないってさっき言いましたけど、人前に立つことは何かしらしてるはず。これまでもこれから先も、表現している姿で人に何かを感じてもらいたい。そして自分に常に正直でいたい。
自分がやりたいと思って突き進んでいることは誰に何を言われても曲げないし、常に実現する方法だけを考えていきたいですね。カッコ良すぎる言い方かもしれないけど、“背中で見せる”って感じかな。

 

PHOTO Ena Kitamura

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