【対談】PMDデザイナー マリエ x RETOY'S編集長 エナ “ファッション談義” 第二弾「自分たちの今、これからのファッション」

E:ヤンチャするならベースが必要だよね。やみくもに言いたいことだけ言ってても伝わらないし、誰が何を言っても批判する人は一定数いる。真面目なだけがいいわけじゃないけど、何かを発信するからには責任は伴ってくるから、ベースがないとそれを受け入れてくれる人も圧倒的にいなくなっちゃうよね。日本人は「みんなに好かれたい、嫌われたくない」っていう、どこか個人の主張が苦手な文化があると思うから、ファッションも好きなように楽しめてる人がどれだけいるんだろうっていつも疑問に思ってるよ。

M:自分がやってるラジオでもゲストに“好きなことを仕事にするってどういう生き方なのか”っていうのをいつも質問してるんだ。好きなことで生きているゲストの方達のワードをどんどん引き出して、リスナーにも聞いて欲しいし、いいワードがあったら私もどんどん吸収するようにしてる。何百人何千人とインタビューしてて、やっぱり好きなことをやってる人の美しさに勝るものはないなって心の底から思うの。リスナーにもそれでいいんだって思ってもらいたいし、私のラジオが何かを自分が始めることへのきっかけになればいいなって。

E:やりたいことがあっても踏み出せない子たちもいっぱいいるから、こういう人もいるんだってことがきっかけで夢に向かってくれると嬉しいよね。歳とともにやりたいこと、考え方もまた変わるかもしれないし。今好きなことに踏み出して欲しい。好きなことをやらせてもらえるって大変だけど本当に幸せなことだから。
私も、RETOY’Sっていう場所を作って言いたいことを言って、この場所を魅力的だと思ってくれる人が集まってくれて、さらにファッション面白いねって思ってくれたら嬉しいから、リスクはあるけどやり続けていくつもり。隣にいる友達に喋るみたいに、難しくしすぎないですっと入る言葉で伝えていきたい。そもそも服を着るのは毎日のことだから難しいことじゃない!ってね。

M:私ね、最近大事にしてるのは定期的にクローゼットを片付けること!

E:えらい!見習いたい(笑)

M:ひと月に一度は「これほんとに全部いるのかな?」って疑問を持ちながらクローゼットの中を見直してコーディネートを組み立てたりするの。そうしたら新しいアイディアが生まれてくる。新しいモノを買い足すよりも今あるモノの中に何が足りていないかがわかってくるんだよね。
次のPMDの展示会もセクションに分けて色々やるつもり。キャラクターのものも展開するんだけど、戦争があった時代に生まれたキャラクターって背景に歴史があったりするからそれをアパレルに落とし込んだり色々と考えてる。PMDらしく自分たちのペースでやりつつ発信していくつもりだよ!

E:自分が服を買うだけだったら知らなかったことをマリエちゃんが見せてくれてる感じがするな。ファッションの入り口をわかりやすく導いてくれてるというか。こういうことからファッションに入ってもいいんじゃないっていう提案をしてくれてるよね。ファッションからその先のライフスタイルにもどんどん繋がっていくイメージ。

M:私ね、spontaneous(スポンテーニアス)って言葉が最近気になってるんだ。自然体とか自然発生的なって意味なんだけど。たまにね、例えば雇われデザイナーとしてサラリーマン的に働いて服を量産していくのもファッションを追求する一つの方法でもあったのかな、そういうやり方も人生にあったのかなって考えるんだよね。でも私はどうしても今やってるような表現の仕方しかできないから、サラリーマンを選んでたら心の病気になってたと思う(笑)デザイナーというカテゴリーでは一緒に見えるかもしれないけど、全然違うんだよね。かわいいものを作るだけのデザイナーだったら「私何やってるんだろう」ってどこかで思ってたはず。だから今のこの形しかなかったと思う。自然体で、何かいいエフェクトがあるものを作っていたいっていう気持ち。社会貢献とファッションっていうのが大きなテーマかな。
今年はそういう想いをうまく伝えられるように媒体にも出て行こうと思ってるんだ。昔より自分に自信がついた分、着飾らなくってもこのまんまの自分でテレビにも出られる気がするの。自分自身の基盤がしっかりあるから世間から何を言われても大丈夫っていう自信がついたんだよね、きっと。この間もどこかのニュースサイトで、マリエのブランドが落ちぶれてる、売れ残りばっかりみたいな記事が書かれてて、こちらとしても色々言いたいこともあるし、なんでこんな嘘書くんだろうって思うんだけど…。でも何が一番悔しいって買ってくれたファンの子たちがそれを見て悲しむこと。完売御礼って出してて手に入らなかった子たちもいるのに、「え、売れ残りあったの?」って思われたらすごく嫌だなって。買ってくれた子の気持ちを考えたらイライラしてたけどうちのチームが「ファンの子はこんな記事読んでませんよ、だから大丈夫です!」って言ってくれたから気持ちが救われた。色んな経験を経て強くなってきたから、今年は色々と外に出て行こうかな!と思ってます。

E:元々一つのことにガーっと集中するタイプだもんね。

M:そうそう、一つのことやり出すと他が見えない(笑)

E:周りが見えるようになってきたと同時にやりたいことも増えてきたんだね。自分の想いをしっかり伝えるために色々模索してる感じがする。

M:うん、それがすごく楽しいよ。あともうちょっとでマックス楽しくなると思う。
今目の前にある課題を片付けていって、もっとクリエイティブにおしゃれなことしていきたい。時間が足りなさ過ぎて自分が三人くらいほしい(笑)

E:わかるわかる(笑)

M:あ、そうだ、今日話したいと思ってたことがあるんだけどいい?ハイブランドがスウェットとかスニーカーなんかのスポーツアイテムを導入し始めた時の衝撃ってすごかったじゃん。それが8年くらい前で、私がN.Y.にいる頃にランウェイとかに出てきたものがやっと今、私たちが買えるくらいの値段になって流通してるよね。だから今世間一般で流行ってるものって10年位前のハイブランドがやってたものが降りてきてるってことでしょ。このスパンってすごく長いなーと思ったの。

E:昔はもうちょっと早かったんだよね。ラグジュアリーブランドが何か出せば次のシーズンには私たちが頑張れば買える色々なブランドさんがもう取り入れたスタイルを出してた。ファストファッションが無かったからカッコいいものが欲しければ無理してでもみんな買ってた。特に昔はこれを着てなきゃかっこ悪い、だったけど、今は個々のスタイルで何を着ていてもかっこいい人はかっこいいというスタンスだからかな。

M:そっかー。それでね、次にブームになるスタイルって何だろう?って考えてて私はチャイナなんじゃないかと思ってるの。

E:ほう。

M:で、その次はロシアなんじゃないかと!次にスタンダードになるのはアジアンなテイストのものだと思うんだ。少し前にケイタマルヤマが発表してたようなスタイル。襟があってボタンがチャイナっぽいものってメンズでもたくさん見られるようになってるから、それがさらにスタンダードになるようにどこかが工夫するんじゃないかなって。アジアンテイストが普通になっていくんじゃないかな?着物もさ、まだ“キモノ”って感じじゃん。でもスカジャンも3.1 Phillip LimやGUCCIがやり出してから、スタンダードになっていったし、どんどんアジアンテイストが主流になりそうな気がする。エナさんはどう思う?

E:さっきの話じゃないけど、ラグジュアリーブランドもストリートや、スポーツテイストのものを取り入れたコーディネートを見せ続けている中で少しずつ変化していっているよね。今シーズン、ファッションウィーク中のストリートスタイルでもよく見かけたサイクルパンツも、進化させたレトロなレオタードルックとかもコレクションで出てきてて、スポーツテイストの中からさらに進化したものが登場してきてる。スパッツから進化して、自転車競技の人が着るようなカラフルなアイテムやピタピタのパンツに90年代っぽいビッグサイズのジャケット合わせてウエストはぎゅって絞るっていうスタイルもまた登場してきてて、懐かしさも相まっていいなって。それを普通の人が着られるまでどこまで落とし込めるのかが気になるけど、このスポーツテイストの進化はまだ続くんじゃないかな。今ってこういうスタイルじゃなきゃいけない!っていうのがないから、またこのサイクルスタイルからどういう風に進化していくか楽しみだね。

M:スパッツスタイルにビッグジャケットやばいね、かわいい。ピタピタかー、イケるのかなぁ。

E:この服を着るための覚悟も必要だよねー鍛えなきゃ(笑)2019春夏シーズンTOGAとかでも見かけたし、色んなプリントものも出てきてるからスキニーの一種みたいに増えてくるのかなぁ。

M:確かにそれは流行りそうだわ。

E:ベースが黒だけだとジムスタイルっぽいけど、ファッションになることでブランドそれぞれのデザインの落とし込みがプリントや細かなデザインに出てきて面白い。浸透するまでは難しいと思うから一般に降りてくるまでのスパンは長いかな。でもスポーツスタイルっていうジャンル自体のスパンは長く感じるけどその中でデザイナーが試行錯誤してトライしてるから、このサイクルスタイルみたいにカテゴリーの中で色々出てきてはいると思うよ。

M:ありえるね。面白い。本当に次また何が流行るのかな。

E:逆に何が来てほしいとかあるの?来るかどうかわからないけど作りたい!とか。

M:やっぱりテーラードは試したいよね。テーラードの技術を使った自分なりのモードな表現をやってみたい。今はこんなカジュアルな感じだけど(笑)、いつも小綺麗にちょっとだけカッコつけたいっていうのが常にある。クールな所は残していきたいね。

E:テーラードやるのはまだハードルが高い?

M:高いね。工程がすごく多いから。あと知識がある人と一緒にやりたいっていうのもあるし、まだ自分がこうしたいっていうビジョンもはっきり見えていないしね。

E:他には何かある?やりたいこと。

M:あ!あるある!冬の間ニセコに行ってずっとスキーしてたんだけど、スノーウェアって毎シーズン買うものじゃないのにレンタルものは型落ちのちょっとダサめのものが多いじゃん。どうせ買うんだったらかわいいの欲しいよなぁって滑ってる人観察して参考にしてたの。やっぱ新しいの着てる人は目立つね。カラーとかかわいいの。もちろん、ウェアとしては技術的なことが必要だから、どこかのメーカーさんとのコラボにはなると思うけど、作ってみたい。

E:イイね!楽しみにしてる。

M:あと、今大切にしていきたいのはこのスペース。(今回インタビュー場所にさせていただいたandMade)
服作りのプロの人たちが集まって楽しいし、将来「ここにいてよかったな」って思えるような未来像が見えるんだよね。ここに通い始めて1,2年経ってるけど、あと何年か経った時に「みんなあそこにいたよね、懐かしいね」って言っていたい。すごく居心地がいいし色んな情報をシェアさせてもらってる。

E:こういう場所があるのは幸せなことだね。

M:うん。好きなことやるためにはお金も必要(笑)みんなすぐにショールームやオフィスを持つのは難しい世界だから。でも好きなことだからできること!今年も頑張ります。
1月26日からは神戸でのポップアップも決まったし。あ、あとRETOY’Sのブログの更新もね(笑)

E:私も楽しみにお待ちしてます(笑)

Special thanks andMade

PHOTO / Nobuko BaBa
TEXT / Marina Tsutada



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