Mame Kurogouchi Spring/Summer 2024 Collection「Fragments」古学的探究と対話に基づく過去と現代の並置が洋服として発芽し、多様なスタイルへと落とし込む
Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)2024年春夏コレクション「Fragments」。プレコレクションをメインコレクションへと集約し、年に2回の発表へと移⾏後初となる本コレクションでは、佐賀県有⽥町を尋ね、17世紀前半の⽇本磁器のあけぼのの記憶を宿す初期伊万⾥の陶⽚を介した、過去と現代の陶⼯たちのものづくりをめぐる対話に⽿を澄ませ、記憶のかけらと⽩磁素地のあわいから⽴ち上がる物語を洋服へと翻訳してゆく。⼤陸の陶⼯がもたらした技術から芳醇したものづくりが、時代を経て国内の陶⼯たちの⼿により独⾃の⼟壌を形成する様に⿊河内は魅せられる。現代の作家にして、17世紀初頭の初期伊万⾥の顕現を試みる⼩物成窯の⼭本亮平・平倉ゆき、17世紀中頃からはじまる初期⾊絵への共鳴を作品化する浜野まゆみらによる案内によって、⿊河内は初期伊万⾥が興隆した数⼗年の歴史を再訪しながら、作⾵の和様化と個性化、そしてその裏にある試⾏錯誤や染付が語る⽇常への⽬線を学ぶ。考古学的探究と対話に基づく過去と現代の並置が洋服として発芽し、今シーズンの多様なスタイルへと落とし込まれている。
さまざまなトーンや質感のホワイト、エクリュ、ミントグリーンのファブリックは、かつての陶⼯たちが恋焦がれた素地の⾊である「⽩」を⽣み出す試⾏錯誤の過程で⽣まれた初期伊万⾥の淡いトーンにインスパイアされ、情感豊かな涼やかさでもって表現され、今季のコレクションを彩るキーカラーとなっている。ガラス質の半透明な釉薬が素地に絡みつき、柔らかな輝きを湛える初期伊万⾥の佇まいは、シアーなラメジャージーのシリーズによる艶めきに変換され、まるで釉薬が流れるかのように素肌の上を覆う。ムラ染めのジャカードが印象的なショートブルゾンやロングジレ、⼿作業による絞り染めが施されたアシンメトリーなドレスは、釉薬の奥に朦朧と浮かび上がる景⾊すら想起させる。初期伊万⾥に⾒られる特徴的な技術の⼀つである「陽刻」がもう⼀つの重要な要素となりコレクションの姿を浮かび上がらせている。紋様⼊りの型を押し当て、柄を浮かび上がらせるこの技術にインスパイアされたいくつかのピースは、⿊河内が「やきものを洋服へと変換」する試みの結果、コレクションを代表するテクニックとして採⽤された。初期伊万⾥の陶⽚に描かれた、⼭⽔や花⿃の⾵韻は現代の⾵景へと翻訳され、⿊河内⾃⾝の記憶と混じり合い、表現される。絵付けで多⽤された草花のモチーフを思わせるジャカードが、ブランドのシグネチャースタイルであるドレスやアクティブなジャンプスーツで登場。唐の景⾊を絵付けの⼿本とする時代を経て、のちの陶⼯が⾃⾝の⾝の回りの景⾊を描き始めたことに習い、⿊河内は⾃⾝が繰り返し訪ねた佐賀の景⾊を洋服に定着させてゆく。
アシンメトリーなデザインと繊細なハンドワークによるニットキャミソールや、カジュアルなニットベストは、⼤⼩さまざまな破⽚を繋ぎ合わせたかのようなデザインにより、複雑で個性的なモチーフの共存を可能にしながら、かけらとなり散在してなお雄弁に過去の記憶を伝える陶⽚を柔らかに纏うことを可能にする。いくつかのルックにディテーリングされた2種の陶器ボタンがコレクションを引き締める重要なフラグメントとなっている。染付のボタンは佐賀県有⽥町の⼩物成窯、陽刻のボタンは作家の浜野まゆみのサポートの下、⿊河内の⼿により形作られた。
■Mame Kurogouchi