AKIKOAOKI Op.,19:Spring & Summer 2024 Collection「symptoms」現実を見つめ煮詰めたその先に新しい景色がある
AKIKOAOKI(アキコアオキ)2024年春夏「Op.,19」コレクション『symptoms』。例えばそこに1枚の白いシャツがあるとして、それは、繰り返す日常から逸出するためのワードローブとしてなり得るのだろうか。その問いに対する解の模索は、少しずつ、現実をすらいどさせていく作業に似ている。当たり前にそこに在った実態は、次の瞬間、私たちには「気づかれない程度」に姿を変える。とても小さな声で、でも確かに、歪み、撓み、剥き出し、流れ、透かし、結ばれる。変容していくその様が今ある現実を超えたとき、一筋の冷や汗がつるりと流れた。誰しもが持ち得る日常の延長に、それは、何時だって両手を広げて待っている。現実を見つめ煮詰めたその先に、新しい景色がある。 繰り返す日常から逸出するためのワードローブをベースに、そこから少しずつリアリティーをスライドさせて、新しいリアルをつくり出す。”現実を見つめすぎて歪み出す”のテーマの元、今期は1枚のシンプルなシャツから構成が始まった。ベーシックな生地感でありながら、シームやカッティングで作り出すブランドらしいラインで表現されたシャツを第1歩として、そこから身体の上で捻れ、歪み、流れていく、様々な”シャツ”のバリエーションを展開している。 ドレスやチュニックトップ、シャツのヘムラインをピックアップして強調したかのようなトップスなど、誰もが知るシャツのムードを残しながら、カテゴライズできないアイテムへと変換されていく。またAKIKOAOKIがつくるシェイプは女性のセクシュアリティーを強調するのではなく、身体と衣服との間にユニークな空間と造形を形造っていく。一見、マーベルトが付いたマスキュリンなトラウザーズのようなボトムスは、実際はスカートで、トラウザーズの見頃がエプロンのように前にぶら下がっている。レース素材のレギンスは、肌の見える部分のバランスが過度に強調されることで、フェミニンな素材感でありながらもどこかfreakな印象を与えている。透け感のあるボーダージャガードは今季のオリジナル生地として作成され、張りのあるしなやかなシェイプを叶えている。ルックブックは、初見でわかるような刺激的な特別さではなく、一見、何の変哲もなく見えるが、注意深く見ていくと違和感を感じるような静寂の中にある狂気を意識した。ロケーションは、誰しもが1度は見たことのある会議室のような部屋の一角。しかし、その空間の奥行きやカラー構成、光の印象は、まるで前後に物語があったかのような佇まいを感じる。また、モデルのヘアメイクでは、冷や汗をかいたかのようなウェットヘアが額に張り付き、メイクはきっちりと仕上げられた丁寧な質感の作り込んだ。キャラクターも全く異なる2人の女性は、最初はとてもベーシックなシャツやパンツを身につけていることで、逆に彼女たちのパーソナリティーが際立っている。段々とそのシャツは捻れ、歪み、拡がっていく。少しずつ、日常としてそこにあったリアリティーは崩れ落ち、時にフェティッシュに、時にドレッシーでエクストリームな非日常へと変容していく。
■AKIKOAOKI