Rick Owens Fall-Winter 2021 WOMEN’S COLLECTION「GETHSEMANE」抑圧された男性のエネルギーや保守主義を嘲笑っているかのようなシルエット

Rick Owens(リック オウエンス)2021年秋冬ウィメンズコレクション「GETHSEMANE」。ゲッセマネは、キリストがはりつけの前夜に祈りをした庭で、最後の審判の前の不穏な静けさと胸騒ぎのする場所だった。現在の私たちは皆、解決策を待つだけの緊張した日々を生きている。壊滅的であろうと合理的であろうと、まるで聖書のような原始的で野蛮な劇場的サスペンスに満ち溢れた毎日を過ごしている。ヴェネツィアのリドにある家の前のビーチはRick Owensの庭のような場所であり、パンデミック禍におけるランウェイショーは全てリドで行った 。コンコルディアの工場から車で2時間の距離にあり、あまり足の踏み入れない、無観客で、そしてホームグラウンドのムードは今の瞬間にふさわしいと感じる。ほぼ全てのルックの下にスキンタイトなレザーのボディスーツを着用。様々なタイプのボディースーツを作り、中にはトップがヒップにかかるように垂れ下がったものや、全面にスパンコールが施されているものもある。ここ数シーズン、フィーチャーしてきたボディスーツはボリューム感のある固くて彫刻的なものから始まり、徐々に現在ののような自己収納型の密閉型ボディカバーの形に変化。これらのボディースーツを、1月に開催されたメンズショーでもフォーカスしたパワーショルダーのケープやボンバージャケットと合わせて提案。着るとまるで体がブルドーザーになったような気持ちになり、抑圧された男性のエネルギーや、保守主義を嘲笑っているかのようなシルエット。ちょうど同じ時期にワシントンで起きた衝撃的な出来事とイメージが重なる。パワーショルダーは恐怖と不安への反応であり、脅威に直面した時の抵抗を表現。これまでのパンデミック禍におけるショーではモデルにマスクを着用してきたが、Rick Owensのマスクは保護の為に作られたものではなく、責任と配慮への敬意の表明であり、緊急事態下における咄嗟の経験における認識。リサイクルされたプラスチック廃棄物から作られたテイラードジャケットは、袖を引き裂き、ボリューム感のあるダウンの袖に置き換えられている。この袖はスナップオンで取り外しが可能。聖書では、衣服を引き裂くことは、人が身につけている衣服を暴力的に引き裂くことであり、怒りの行為。これをコレクションのキーディテールとして取り入れ、スラッシュ加工されたブラックデニムや、コートやジャケットにパッチワークされたシャーリングや牛革でレンダリングされ、スラッシュ加工を施したディテールにも反映。すっきりとしたシルエットのバックレスロングスリーブのシェードガウンは、厚手のビスコースニット、スパンコールニット、ブラックオーバーダイデニムで展開。ボディスーツと同様に、トップスはヒップから垂れ下がり、時にはTシャツを合わせる。シャーリング加工のスパンコールのトングスは、淡々とした実用的な謙虚さに光沢を加えるために、リサイクルカシミアのボディスーツの上に着用。これらのリサイクルカシミアの糸は、ボディ部分をまくし上げる為に2倍の糸を利用した厚手のスウェットやボリューミーなブランケットサイズのフード付きローブに使用。これらの宗教的なフード付きローブは、テントサイズのデュヴェやスパンコールで覆われたデニム地でも展開。最新のメンズショーで使用した揺るぎない男性の攻撃性を表現したブリーフに、シンプルな牛革のエンベロープを巻き、女性のイブニングクラッチを。ヘビーワークシャツは、ブラックの縦糸・横糸を使用した16オンスのセルビッチデニムを使用し、1945年に設立された日本・岡山の山足織物の坂本式自動シャトル織機で米国向けに特注で織ったもの。これは日本製のDRKSHDWカプセルコレクションのアイテム。サウンドトラックにはGHOSTEMANEによる「SQUUEZE」のエクスクルーシブEXTENDED REMIXを使用。あらゆる面で抑圧された男性の怒りを表現しているが、もちろん、抑圧された怒りは男性特有のものではないのだ。



CONTENTS