SAINT LAURENT WINTER 2022 COLLECTION 独立心のある活動家で出版人であるナンシー・キュナードの果敢な精神を取り入れ現代にしっかりと組み込む

ⒸCourtesy of Saint Laurent

SAINT LAURENT(サンローラン)2022年ウィンターウィメンズコレクション。ムッシュ イヴ・サンローランの熱のこもった創作力と、生涯にわたるアートへの心酔、大切に守られてきたプライベートな世界のなかで、アール・デコというスタイルは特別な位置を占めてきた。彼の個人的なオブジェのコレクションのうち、初期に購入した最も貴重なものの一つは、もともと1925年の万国博覧会に展示されていたデュナンの一対の花瓶だった。1930年代、ジャン・ミシェル・フランクがアヴァンギャルドな顧客のためにデザインしたモダニズムのインテリアは、その数十年後にムッシュが自宅に施した装飾に多大な影響を与えることになるが、彼のランウェイのコレクションにおいて、アール・デコの痕跡が見られることはほとんどなかった。本コレクションは、アール・デコのインスピレーションを採用。ショーへの引用は、本質的で全体的なアウトラインの中に感じることができる。独立心のある活動家で出版人であるナンシー・キュナードは、時代に先んじて大胆に服を着こなし、マスキュリンなワードローブに独自の印象的な痕跡を残し、パイオニアとしての役割を果たした。クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロはキュナードの果敢な精神を取り入れ、それを現代にしっかりと組み込んでいる。これを実現させるため、サンローランのシグネチャーアイテムは、下に向かって流れるようなシルエットを包み込むドラマティックな新しいシェイプが採用されている。そのシルエットは抑揚が特徴的。考え抜かれたラインが、高密度の素材でパレトットのように仕上げたシグネチャーのアウターウェアを、繊細な生地のドレスと組み合わせ、透明感のあるきらめきを作り出している。意表をついたフットウェアも軽やかさをプラス。ボリューム感は、強く傾斜したショルダーに切り替わり、その一方でシンプルなシルバーやゴールド、ブロンズのブレスレットを大胆に重ね付け、細長いシルエットにアクセントをつけるなど、全体的にバランスを調整した新鮮さが見受けられる。メゾンの職人の熟練技によるフェイクファーにおいても、ショルダーを傾斜させたタキシードも、イノベーションは明確。力強いマットな色彩は反射するとほのかに光沢を感じさせ、そうした抑制は、面白みを排除するのではなく、静かに詞的な表情を醸し出し、明確な意志と活力に満ち溢れている。



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