Mame Kurogouchi 2021 Spring/Summer Collection「Window」他人の家の窓にかかるカーテンからその奥にある世界へ想いを馳せる日常、自身の内へと向かう旅
「誰かが去った後、最後まで取り残されるカーテンは、内と外、両方の世界の寡黙な観察者であり、主人を失った後ですら続く二つの世界を繋ぐ柔らかな扉である。」Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)の2021年春夏コレクションは窓(window)が持つ、内と外という二つの世界を分かち、繋ぐという役割に目を向けながら、デザイナー黒河内真衣子自身の過去の記憶に焼き付いた風景を洋服として現代に蘇らせ、経過する時間の新たな表現へと挑戦。他人の家の窓にかかるカーテンからその奥にある世界へ想いを馳せる日常は、ある日急速に瓦解し、窓の内側から外の世界を見る観察者となる。ブランドの重要なDNAであり、これまでのコレクションの中心をなすアイデアでもあった「旅」は、これにより今回、外の世界ではなく自身の内へと向かう。様々な想像上の窓を描きだし、それぞれにカーテンをかけるようにオリジナルの生地を生み出す。懐かしさを感じさせるラッセルレースのコートとドレスは現代的なグラフィックを纏って登場し、サマーウールのチェックシリーズの格子柄は窓そのものを想起させる。カーテンを思わせるディテールもコレクション全体にアクセントを与える。たっぷり用いた生地に贅沢にとったタックは様々なアイテムの袖やボディの背面、フードなどにあしらわれ、風をはらんで優しく広がるカーテンのようなボリュームを強調。レースのカーテンなどに見られる透かし模様の刺繍にインスパイアされたアイコニックなドレスは、ノスタルジアを感じさせつつ、計算されつくしたカッティングとボリュームコントロール、シグネチャーである様々な刺繍をふんだんに用いることで唯一無二の存在感誇りながら、今季のエレガントな姿勢を体現する。これまで旅先でサンプリングされていた草花のレファレンスは、今季生け花を通じて行われる。時間の経過を経て枯れたアヤメ、ユリなどの和花の花弁は丁寧に採集され、今季を象徴する柄となって刺繍や編みで表現され、新たな命を獲得。カラーパレットはピュアなホワイト、柔らかなエクリュ、そして長年日の光に強烈に晒され、日に焼けたカーテンを思わせるパステルイエロー。ナチュラルなカラーシェードがコレクションに豊かな時間軸を視覚的に与える。ウェアに多様された刺繍のテクニックはアクセサリーにもあしらわれ、コレクションのクラシカルなムードを加速させる。シアー素材のバケットハットは、フローラル刺繍で覆われ、陽の光を受けることで木漏れ日のような影を生み出す。今シーズンを印象的に飾るスカーフも、ソフトなシルクオーガンジーの上にフローラルモチーフがふんだんに刺繍され、ストリングスを用いることでヘッドピースやスカーフにも姿を変える。春の芽吹きを結晶化させたようなピアスは、まるで曇りガラスを思わせる乳白色で登場。先シーズン登場したアイコニックなコード刺繍のバッグシリーズは新色と新型ともに新たな定番としてMame Kurogouchiの世界に加わる。