Max Mara Spring/Summer 2022 Collection スマートで不機嫌そうなビート・ジェネレーションの作家が昔ながらのタイプライターに向かって長く暑い夏の物語を打ち込む姿 #MaxMaraSS22

©PIERNICOLA BRUNO

Max Mara(マックスマーラ)2022年春夏コレクション。今シーズン、マックスマーラが思い描くのは作家。スマートで不機嫌そうなビート・ジェネレーションのアンテレクチュエル(知識人)が、昔ながらのタイプライターに向かって、長く暑い夏の物語を打ち込む姿。物語の中では、善悪が複雑に絡み合う魅惑的で洗練されたロマンスが、エレガントでアンニュイな雰囲気を漂わせながら、瀟洒な別荘や秘密のビーチ、疾走する車、ボート、シックなレストラン、カジノを舞台に繰り広げられる。フランソワーズ・コワレは、まさにそのような作家だった。プルーストやスタンダール、ジッド、カミュを愛読し、手に負えないティーンエージャーだった彼女は、2度の退学処分(1度はモリエールの胸像を吊るしたことが理由)を受けた。17歳の時、バカロレア(フランスの大学入学資格試験)に落ちたことから、恒例の夏のファミリーバカンスを諦め、家に残って勉強することを余儀なくされた。海辺の居心地の良い別荘でゆったりと気ままな数カ月を過ごすという現実を奪われた彼女は、哲学的な手段を取ることに。想像の中で、その場所に行くことにしたのだ。そして「フランソワーズ・サガン」というペンネームのもと、想像の中の夏を小説『悲しみよ こんにちは』として形にした。この文学的傑作は、社会に旋風を巻き起こし、オットー・プレミンジャー監督による映画化も実現、非常に大きな興行的成功を収めた。このストーリーの主人公セシルは、サガン自身が実際のバカンスで体験するはずだった、快楽主義的で魅力的な気晴らしの数々を楽しむ一方、自分をゆっくりと見つめ直す時間が残されたことに気付く。マックスマーラが考えたのは「現代のセシル」-ブルジョワの反逆者-をイメージしたファッション。サガン自身のスタイルといえる気楽なビートニク・シックを表現し、クラシカルなワークウェアにフォーカスを当て、フィッシャーマンズスモックやレイバージャケット、メカニックオーバーオール、カーペンターパンツがプレタポルテの技巧で再解釈。パリっとしたギャバジン、キャンバス、パーフェクトなポプリン、真新しいデニムを使用したアイテムは、コントラストのある精緻なトップステッチが特徴的。タンクトップやチャンキーなクレープソールを施したボーイッシュなサンダルが、バッドガール ルックの仕上げとなり、ふわりとしたフェザー刺繍をあしらったシアーなシフォンとのコントラストが際立つ。カラーは、サンドやタン、ネイビーやブラックが基調となり、オレンジやイエローもポップカラーとして存在感を放つ。デッキチェアやパラソル、ウインドスクリーン(風よけ)など、ノスタルジックな夏の素朴な美しい時間に欠かせない道具が、大胆なストライプキャンバスの爽やかなトータルルックのインスピレーション源。「今や私たち皆が実存主義者だ」と現代哲学を考察する専門家たちは言う。確かに、この1年半の間、私たちは-まるでサガンのように-心の中の自由を探究することを少し学んだ。かつて、サガンが描いたミリュー(社会的階層)を受け、彼女を「ラグジュアリーホテルの実存主義者」と呼んだ批評家がいた。マックスマーラにとって、その言葉は、強く知性に訴えかける離れわざと、この先に待つ素晴らしい夏を享受する喜びを的確に結びつけた表現のように聞こえる。



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