DIOR FALL/WINTER 2019-2020 COLLECTION「テディ・ガール」英国黎明期に誕生したサブカルチャーである“テディ・ボーイ”のガールフレンドを1950年代風に再現

DIOR(ディオール)2019-20秋冬コレクション。アーティスティック ディレクター、マリア・グラツィア・キウリがテーマに据えたのは“テディ・ガール”。英国黎明期に誕生したサブカルチャーである“テディ・ボーイ”のガールフレンドを1950年代風に再現。戦後まもないこの時期は、クリスチャン・ディオールによる“ニュールック”が一大ムーブメントを巻き起こした時代で、以前には実はあまり注目を浴びてこなかった。荒涼とした風景をバックに、“テディ・ガール”たちはみな奇抜なヘアスタイルと、エドワーディアンスタイルのベルベット素材のカラーが特徴的なメンズスタイルのジャケット、フレアスカート、デニムやブラックレザーのブルゾン姿で登場。マリア・グラツィア・キウリは1950年代を象徴するアイコンを新たな視点で解読するとともに、マーガレット王女の人物像を組み合わせ。古い慣習を厭う若き王女は1951年、21歳の誕生日を記念してセシル・ビートンが公式なポートレートを撮影する際に、英国王室御用達のデザイナーではなく、ディオールに発注したドレスを身に着けることにした。英国カルチャー特有の、古典と破壊、エレガンスと反逆に魅せられていたクリスチャン・ディオールが、そこからいくつものアイデアを得ていたことは、現在ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)で開催中のエキシビション『Christian Dior: Designer of Dreams(クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ)』からも読み取ることができる。マリア・グラツィア・キウリはディオールのコードをひとつひとつ再検討、コードが発する言語を未来のクリエイションへと昇華。よりメンズライクなシルエットを演出する、カッティング、素材、ベルベット素材のカラーが印象的な「バー」ジャケット。クリスチャン・ディオールらしいウエストマークがシンボリックなドレスをカットし、テクニカル素材を用いることで、よりしなやかな印象に仕上げたプリーツスカートとの相性も抜群。メゾンを象徴するエレガンスとスポーツウェアのエスプリ漂う1950年代を、コンセプトやスタイルの点から再解釈。1950-60年代のアンダーグラウンドカルチャー、とりわけフランスの“ブルゾン・ノワール”へのオマージュとしてイヴ・サンローランがディオールのために制作したブラックレザーブルゾンもまた、マリア・グラツィア・キウリが見直したレガシーのひとつ。マリア・グラツィア・キウリのお気に入りのドレス「ミス ディオール」。クリスチャン・ディオールが1949春夏オートクチュール コレクションで発表したアイコニックなシルエットが美しいドレスで、モダンなデザイン、素材や高度なテクニックがおりなす力強さや優美さが特徴的。このドレスから誕生したイブニングドレスには、透明なスパンコールビーズがふんだんにエンブロイダリーで施され、立体的なフラワーモチーフを配したボディとスカートで構成。低めのヒールのパンプスは細身でローカットなのが特徴的。ヤシの葉が描かれたトワル ドゥ ジュイは、アーティストのマリオ・スキファーノを彷彿させ、シャツのシリーズやレッド×ブラック、ブラック×ホワイトのチェックやギンガムと組み合わせられて登場する。彼らが好むスタイルセンスにおいてのサブカルチャーは、身に着けるものを選ぶことが政治的な意思表示になる、というシンプルな事実を裏付ける。セリグラフィーのTシャツは、アメリカの女性詩人ロビン・モーガンによる『スターフッド・イズ・パワフル』(1970)から『シスターフッド・イズ・グローバル』(1984)や『シスターフッド・イズ・フォーエバー』(2003)まで、女性の団結という概念を称賛する詩集へのオマージュ。ショーの舞台装飾は、男性だけに与えられた特権を皮肉るため男性名で活動したイタリア人アーティスト トマーゾ・ビンガが生み出した、各アルファベットが女性の身体の部位を示す“ABCブック”に即して展開。これは、ディオールの歴史を再解釈するために、コレクションに登場するアイテムを性別や肉体を超越した女性らしさの概念と、マリア・グラツィア・キウリが大切にしているアイデンティティを改めて結び付けるための方法ともいえる。